【犬のてんかん、発作】特発性てんかんを獣医師が解説します。

犬が突然にてんかん発作を起こすことは、一緒に生活をされているご家族にとって、大変に心配なできごとです。特に、初めて犬のてんかん発作をご覧になった方は、もしかしたら、このままお別れになるのではないかと思ったと、そのときの様子を教えていただくことがあります。これまで経験されたことのない不安に襲われることが多いようです。

そして、これまで元気で、どこにも異常が見られないような犬が、突然に発作を起こして、その発作が数分で治って、終わった後には、また元気に戻っている時には、ほとんどの場合において動物病院に急ぐ必要はないでしょう。できれば診察を受けた方が良いでしょうが、夜中に1回だけ起こったとしても、朝まで待って、かかりつけの先生に診察を受けた方が良いと思います。しかし、あとでお話をする、発作重積の状態であれば、早めに動物病院に行くべきです。これについては、後の方でお話ししますね。

犬が痙攣発作を起こした場合には、もし時間的精神的な余裕があれば、動画を撮っておくと良いでしょう。もしできれば、体全体を写してください。動物病院で診察を受ける時に、大変参考になる資料となります。

犬がてんかん発作を起こすことがあります。

多くは、意識がないように見え、横たわった状態で、体を硬くしてビクンビクンと激しい発作がみられます。その後に、体や手足を伸ばしたり、曲げたりを繰り返し、数分以内に治まります。これを全般強直間代性発作と呼んでおりまして、どうぶつで最も多く見られるものです。

犬がてんかん発作を起こすと、意識がある場合と、ない場合がありますし、痙攣がみられる場合と、みられない場合があります。そして、その痙攣も、体の一部のこともあれば、体全体にみられることがあります。脳全体に起こる発作で、痙攣が見られないことは、ほとんどありません。

この記事を読まれている方が、最も知りたいことは、てんかんを起こした犬が今後どうなってしまうのかという予後判断だと思います。

診断が、特発性てんかんで、抗てんかん薬で、てんかん発作が少なくなっていれば、てんかん発作がない犬と同等の寿命だと考えて良いものです。しかし、難治性てんかんや、重積と呼ばれる、連続するてんかん発作を経験する犬の場合は、寿命が短めになることがあります。

犬のてんかん発作が見られた場合に、特発性てんかんなのか、他の病気なのかが気になります。

てんかんは、原因別に3つに分類されます。特発性てんかん、症候性てんかん、そして、潜在性てんかんです。また、原因別ではなく、発作のタイプで分類すると、焦点性発作と全般発作に分かれます。

原因別の特発性と症候性のそれぞれのてんかんは、どう違うのでしょうか。これは、脳に見た目の変化がないのが特発性てんかんで、見た目の変化があるのが症候性てんかんです。特発性てんかんの原因は遺伝的素因です。そして、脳の中を見るためには、MRI検査が欠かせませんが、ときに、超音波検査でもわかることがあります。MRIや超音波検査でわかるのは、画像としての異常があるか、ないかです。特発性てんかんで、画像としての異常がない場合には、脳波検査(EEG)で異常を見つけることになります。そして、特発性てんかんの場合には、脳波検査(EEG)以外では異常を認めることはありません。

ちょっと分かりにくいかも知れませんので、例を使ってお話をします。乾電池と豆電球の回路があったとします。電池もつながっているし、線も切れていない、けど豆電球が点灯しない。その原因が、電池切れというのが、特発性てんかんで、形としては、どこにも異常が見られない異常です。それに対して、線が切れている。つまりは、形として、異常がわかるのが、症候性てんかんです。

ここで、大切なことをお話ししますと、てんかんの診断では、それが特発性なのか症候性なのかを判断することがとても重要です。そして、それらを分けるのが、見た目の変化があるかないかであり、それを見るためには、MRIが必要なのですが、実際に見なくても、問診や一般身体検査、そして神経学的検査、血液検査、X線検査、超音波検査などの一般臨床検査を行う事で、MRIまで行わなくても、特発性か症候性かをほぼ判断することが可能です。

症候性てんかんの原因には、脳の腫瘍、脳炎、水頭症などの先天性の変化、そして脳血管障害があります。そして、これによって発作が反復します。

原因別の分類は、特発性てんかん、症候性てんかん、そして、潜在性てんかんです。最後にご紹介するのが、潜在性てんかんですが、これは、まず、形の変化がないものです。そして、症候性てんかんが考えられるのに、明らかな脳の形の変化がなく、特発性とも考えらるのに、症候性てんかんを完全に除外できないものです。

すみません、ちょっと分かりにくいですよね。多分、症候性てんかんだと思うけど、決定的な変化を捉え切れていません。そんなものです。この潜在性てんかんは、別名として、おそらく症候性てんかんとも呼ばれます。

次には、発作型による分類です。これには、焦点性発作と全般発作があります。簡単に説明しますと、脳の一部に起こった発作か、脳全体に起こった発作かが違うということです。

そして、焦点性発作には、意識がある中で起こる発作と、意識がないか、あるいは意識が弱くなって起こる発作があります。意識がちゃんとある中で起こる発作を単純部分発作、意識が無かったり、弱かったりして起こる発作を複雑部分発作と呼んでいます。

一方、全般発作は、脳全体に起こるもので、体全体で痙攣します。最終的には、これらの発作は数分以内に収まりますが、犬の痙攣発作を初めて見た方は、かなり長く感じられるようです。

このような発作が見られるのは、実はてんかんだけではありません。これまでの話は、てんかんの話ですが、ここで、痙攣発作を起こす病気を一通りご紹介します。

狂犬病、そして今回のテーマである特発性てんかん、髄膜脳炎、脳の先天異常、水頭症、犬ジステンパー性脳炎、トキソプラズマ症、コクシジウム症、リケッチア症、消化管内寄生虫症、門脈体循環シャント、脳や脊髄の腫瘍、低酸素症、大脳障害、低血糖症、低カルシウム症、高リポタンパク白血症、破傷風、いろいろな中毒です。

ここで、てんかんに戻ります。

では、治療はどうするのかと言いますと、抗てんかん薬を使うことになります。抗てんかん薬は、1回だけてんかん発作があったからと言って使う事はまずありません。一応のガイドラインがありまして、これに従うと、3か月の間に、2回以上の発作が見られたらとされています。もちろん、これはガイドラインですので、このとおりでなければならないということではありません。

抗てんかん薬には、いくつかの種類があります。そして、それぞのの抗てんかん薬には、有効血中濃度測定というものがあります。これは、薬を飲んでいるけど、ちゃんと効いているのかどうかを判断するための血液検査です。

そうですね、ここでかなり大切な話をもう一つしますと、てんかんの治療として、抗てんかん薬を飲むと、てんかん発作がなくなると期待されることがあるかも知れません。しかし、てんかん発作は多くの場合には、回数が減るだけで、完全になくなることは少ないものです。

この図をご覧ください。

てんかんが脳の興奮で起こることを示しています。波線が、脳の興奮です。そして、その興奮が赤い線を超えるくらいに高くなると発作が起こるとした場合、抗てんかん薬の働きは、この赤い線を引き上げて、青い線くらいまで持って行くことです。赤い線を越える脳の興奮は、5回に対して、青い線を越える脳の興奮は1回です。このように、発作ゼロを約束するものではなく、今よりも少なくできますよというのが、抗てんかん薬です。

抗てんかん薬は、それぞれの犬によって、効果が高かったり、低かったりします。そして、1種類だけではなく複数種類を組み合わせて、良い結果を得ることができる場合もあります。

私は、ゆっくりと効果を待てる場合と、ある程度即効性を期待しなければならない場合とで、治療開始に使う薬を分けています。1種類ではなかなか効果が認められない場合には、2種類や3種類と言った組み合わせで治療をすることもあります。

そして、最後になりますが、発作重積のお話しです。

発作重積というものがあります。これは、1回の発作が長く続く場合や、1回の発作が完全に終わる前に、次の発作が見られる場合、そして、1日に5回以上発作が見られる場合を発作重積と考えています。この発作が長く続くというのは、10分程度のことです。

このような場合には、できるだけ早くに動物病院に向かってください。