【犬のマーキング】排尿行動を獣医師が解説します。

犬は、気になる匂いを嗅ぐと、膀胱括約筋が緩んで、オシッコをしたくなります。

膀胱括約筋(ぼうこうかつやくきん)とは、膀胱を巾着袋に見立てると、その巾着袋の口を絞っている紐のようなものです。中身が出ないように、キュッと口を縛る筋肉があって、それを括約筋と言います。ちなみに、肛門にも括約筋があります。

ある実験で、犬の鼻の周りに電気刺激を与えると、膀胱括約筋が緩むことがわかりました。つまりは、犬は鼻を刺激されるとオシッコをしたくなったり、実際にオシッコをしたりします。

犬は嗅ぐ匂いによっては、膀胱の括約筋が緩み、マーキングのスイッチが入ります。これは、自律的な行動です。すなわち、意識的な努力をすることなく、何かを考えてではなく、自動的に起こってしまう現象なのです。

犬のマーキングは、後付けのように、いろいろな意味で解釈されています。縄張りの外周をマーキングするのだというのが、よく使われる、何となくもっともらしいストーリーになっています。

当然ながら、そうではありません。もし、外周だけにマーキングをするのであれば、その中にはしないということになりますが、あなたの犬はどうですか?

犬は縄張りの外周にも、縄張りの中にもほぼ全体的にマーキングをします。円の周りにも、円の中にもマーキングをするのです。

子犬には生後数週間過ぎる頃、巣の中を清潔に保とうとする本能が働きます。そして、巣穴とその外を自由に動くことができる場合には、巣穴を出て排泄をしようとします。

これがあるので、家庭犬の排尿や排便をしつけることが可能になります。これは、ある程度本能的な活動です。犬がお家全体を自分の巣穴だと見なしてくれると、家の中で排泄をすることがなくなるかも知れませんが、それは難しいことのようです。

また、逆に、お家の周りを丁寧にマーキングするような衝動があります。

犬が散歩の度に、足を上げてマーキングをすることは、何かの意地表示や目的があるというよりはむしろ、ほぼ無意識的に起こっているものなのです。