【子犬の皮膚疾患】皮膚の病気を獣医師が解説します。

子犬に見られる皮膚疾患には、膿痂疹若年性蜂窩織炎鱗屑、などがあります。膿痂疹や若年性蜂窩織炎は、しっかりと治り、再発をすることは少ないのですが、鱗屑は、原発性と呼ばれるものと続発性と呼ばれるものがあり、これによって予後が変わるので、まずは原因の鑑別が大切になります。

膿痂疹

膿痂疹のほとんどは、生後6か月よりも早くに見られる皮膚疾患です。症状としては、子犬に膿疱が見られます。膿疱とは、ちょっと大きなニキビのようにみえます。これは特に子犬のお腹に現れます。子犬のお腹は、他のところを異なり、毛が少ないことがほとんどです。同じように、毛が少ないところとして、足の付け根やワキにみられることもありますし、毛の多い少ないに関係なく、全身のどこにでもできることがあります。

そして、この膿疱は、数個だけのこともあれば多数見られることもあります。膿疱の表面は柔らかいので、すぐに破れてしまって、全体がかさぶたになったり、表皮小環と言って、小さな丸い環状に薄いかさぶたが残ることもあります。

子犬のほとんどは、この膿疱やかさぶたを気にしません。気にしないとは、引っ掻いたり、舐めたりしないと言うことです。ときに、この膿痂疹に似たもので、毛包炎と言う膿皮症が起こることもありますが、この場合には、痒いことがあるので、引っ掻いたり舐めたりすることがあります。

ちなみに、細かいことなのですが、膿痂疹には毛穴が含まれず、毛包炎には毛穴が含まれます。

膿痂疹と毛包炎のように、同じように見えて違うものということはよくありますので、動物病院では区別をすることから始まります。

膿痂疹に似ている病気

細菌、外部寄生虫(毛包虫)、皮膚糸状菌などの感染性疾患。そして、次に紹介する若年性蜂窩織炎と落葉状天疱瘡という病気です。

膿痂疹はどのように治るのか?

軽いものは、自然にも治ります。何もする必要がありません。そうではない場合には、週に2回ほどの薬用シャンプーを行います。これを治るまで続けます。このときに使うシャンプーは、動物病院でご相談してみてくださいね。

そして、抗菌薬の軟膏を使うこともあります。また、さらに重い場合には、飲み薬を使う場合もあります。

いずれにしても、多くの場合には、2週間以上の治療期間は必要なく、その前には治ります。ときに、先にご紹介した膿痂疹と毛包炎が混在していることもありますので、この場合には、毛包炎の治療が2週間以上した場合でも必要になることがあります。

子犬にみる病気ですから、栄養面でもサポートも必要です。適切な栄養バランスの取れた食事を十分に与えてください。

若年性蜂窩織炎

原因不明の病気ではありますが、治療方法もあり、予後も良好です。

若年性蜂窩織炎には、他にもいくつかの呼び名があります。若年性膿皮症、若年性無菌性肉芽腫性皮膚炎、または子犬腺疫とも言われます。多くは生後4か月齢未満の子犬がかかり、原因は不明です。

同時に生まれた兄弟犬が同様の症状を見せることがありますが、感染するような病気ではありません。(現在のところ)

若年性蜂窩織炎では、どのような症状が見られるのか?

小さなポツポツとした膿疱と呼ばれるものができて、表面が破れて、かさぶたができます。これが、マズル、目の周り、顎などの顔面に現れます。ときに、耳の中にもできます。膿疱が見られない子犬もいますが、その場合でも、マズルや目の周囲が腫れることがあります。

顔の腫れているところや、膿疱があるところを痛がる犬もいます。この若年性蜂窩織炎では、下顎のところにあるリンパ節が腫れることがありますが、この腫れは、近くにある他のリンパ節にも及ぶことがあります。

足の付け根や肛門の周りに、無菌性脂肪織炎が起こることもあります。このような場合には、子犬の多くが食欲や元気を失います。

若年性蜂窩織炎に似た、他の皮膚疾患

膿痂疹や細菌性毛包炎のような、細菌によるもの、毛包虫症のような外部寄生虫によるもの、皮膚糸状菌症のようなカビによるもの、そして免疫に関わる皮膚疾患として、落葉状天疱瘡、狼瘡性反応、脈管炎、有害物による発疹などです。また、リンパ腫のような腫瘍も検討が必要なことがあります。

診断のために、行うべき検査には、表面に細菌が増えてはいないか、毛に真菌が増えてはいないか、そして、毛包に毛包虫が見られないかなどがあります。リンパ節が腫れている場合には、リンパ節の病理組織学的検査を行うことも重要です。

治療

若年性蜂窩織炎の治療には、通常飲み薬を使います。通常は、飲み薬を使うと、2-3日ほどで症状が改善し始めます。体温が高かった子犬は、熱が平熱に下がり、食欲がなかった子犬には食欲が戻ります。

顔の病変部位は、痛みを伴うことがあるので、塗り薬はあまり使われません。できるだけ触らないようにしたいからです。

若年性蜂窩織炎の予後

ほとんどの場合、予後は非常に良いのですが、症状が重篤だと痕が残ります。瘢痕化や脱毛が見られることがあります。

鱗屑

鱗屑とは、いわゆるフケのことです。皮膚についているフケが鱗屑、皮膚から離れているものが落屑です。

鱗屑は、原発性と続発性があります。すなわち、皮膚疾患そのものが、鱗屑を起こすものと、何か他の原因があって、その結果として鱗屑が見られるものがあります。

原発性の鱗屑には、遺伝的な疾患と考えられるものがあり、この場合には完治はしませんが、鱗屑をなくすことではなく、できるだけ減らすことを目的に治療は行われます。治療の中心は、低アレルゲンで刺激の少ないシャンプーと保湿クリームや保水液です。フケが多く見られるということで、ブラッシングで皮膚の表面を痛めたり、フケを溶かすような角質溶解を目的としたシャンプーは、この皮膚症状を悪化させることがあります。

続発性の鱗屑の中には、毛包炎が見られるものがあります。そして、毛包炎の原因には、細菌、毛包虫、皮膚糸状菌(カビ)が関係していることがあるために、フケがなかなか少なくならない、あるいは、多めに見られる子犬では、細菌に対する皮膚スタンプ検査、毛包虫に対する皮膚掻破検査、真菌に対しては、真菌培養などの検査を行います。そして、この続発性の鱗屑では、角化溶解性あるいは角化軟化性シャンプーを使うことで、鱗屑が改善する時間を早めることができます。シャンプー頻度は、症状の改善が見られるまでは、週に2回が目安です。

この他に、鱗屑の原因とされているものには、脂漏症、アレルギー性皮膚炎(アトピー性、食物アレルギー性)、マラセチアによる皮膚炎があります。これらは、適切に診断が行われると、それぞれに合った治療方法があり、完治しなかったり、再発を繰り返す場合もありますが、鱗屑の減少には十分な効果が認められるものです。