【犬の低血糖症】生命の危機。獣医師が解説します。

犬の低血糖症の原因には、いろいろなものがありますが、多くは生後数か月、およそ4か月齢未満の仔犬に起こる特発性低血糖症や、糖尿病治療中に起こるインスリンの過剰投与によるものが中心です。

まずは、低血糖症が疑われたら、すぐに動物病院に向かってください。そのときに、もし犬が何か食べ物を食べることができるなら、食事を与えてから向かうのが良いのですが、多くの場合には、何も食べられないでしょうから、ティースプーン1杯くらいの蜂蜜か、ガムシロップのような液状の糖分を口の中に擦り込んでから向かってください。もしも、それに時間がかかるようであれば、動物病院に向かうことを優先してくださいね。

糖尿病治療中で、犬の具合が悪い原因として高血糖の疑いもある場合、さらに糖分を与えることに不安を覚えるご家族もあるでしょう。それでも、高血糖よりも低血糖の方がよっぽど重大な問題ですので、どちらかわからない場合でも、ティースプーン1杯ほどの蜂蜜は、有用だと思います。それを含め、可能な限り獣医師の指示に従ってくださいね。

低血糖症の症状

低血糖症で見られるのは、食欲不振、元気消失、衰弱、嗜眠、行動異常、発作、運動失調、抑うつ、昏睡、震え、などです。

特に、仔犬の場合には、前日の夜にあまり食べなかったとか、夕食が早くて、朝食が遅くなったなど、空腹時間が長い場合に起こりやすく、重篤になりやすい傾向があります。私が診察をする仔犬の低血糖症は、ほとんどがぐったりとしていて、動くこともできない状態で、体温も低めになっていることがあり、ときには、どのように治療に取り組んでも、その効果が見られないままに死に至ることもあります。

しかし、このような仔犬の特発性低血糖症でも、生後4か月をすぎたら、ほとんど見ることがありません。私が診察をするのは、だいたい生後3か月未満の仔犬です。

そして、糖尿病治療中であれば、あまり重度の低血糖症になることは少ないのですが、もしあるとすれば、インスリンの量を増量するよう獣医師から指示があり、まだその増量されたインスリンで安定した状態ができていないとか、食事を取らないうちにインスリンを注射したが、その後犬が食事をとってくれなかったなどと言った、インスリンの過剰投与によるものがよく見られます。

しかし、インスリンの過剰投与は、わかっていて過剰に投与することはほとんどなく、多くは結果として投与量が過剰であったというものです。

低血糖症を起こすもの

インスリンの過剰投与、インスリノーマ(膵臓癌)、血糖降下薬、腎性糖尿、敗血症、特発性(仔犬、若年性)、飢餓、吸収不良、肝臓の病気、アジソン病、下垂体機能の低下、キシリトールの摂取

その他には、獣医師による人為的な検査ミスもあるという報告があります。採血した血液の処理に時間がかかれば、ときにそれだけでも実際の血糖値よりも低い検査結果が出ることがあります。しかし、採血した血液の処理に時間がかかったとしても、1-2時間程度では、それほど問題になるほどのエラーは起こりにくいものです。その他、検査機器や検査センターの測定エラーもあるようです。

少なくとも、低血糖症は、すぐに治療が必要です。それにもかかわらずに、元気な犬で低血糖症という検査結果が出たら、まずは、検査結果を再検討する必要もあります。

動物病院では、どのような治療をするの?

まずは、糖分を投与します。基本的な治療方法としては、静脈注射や静脈点滴でブドウ糖を投与します。しかし私は、できるだけ口からブドウ糖を与えるようにしています。静脈注射や静脈点滴でブドウ糖を投与することは、非常に簡単で速やかに血統値を上昇させることができるのですが、その後の血糖値の安定化が難しくなることが多いのに加え、あまりにも急激な血糖値の変化は、犬の体に悪影響を及ぼすこともあります。

急いで血糖値を安定させたいけど、急ぎすぎでよくな事態も考慮しながらの治療になります。

低血糖で発作が起こることもあり、この場合には、発作を抑える薬を注射したり、点滴したりします。

また、膵臓癌の治療の第一選択は、外科手術で膵臓癌を取り除くことです。

仔犬の特発性低血糖症の場合には、度々繰り返します。朝になると、途端に元気がなくなっていたり、フラフラして起きてきたり、ぐったりとして、既に動けなくなっていたりということが特に朝に起こります。

このような場合には、夜中もある程度食事を少量ずつ与え続けることが有効です。ご家族に夜通しのケアが困難な場合には、夜も治療ができる動物病院に相談されるのが良いでしょう。そして、ある程度食欲が安定し、月齢が進めば、仔犬の特発性低血糖症が起こることは少なくなりますし、生後4か月を過ぎれば、多くの場合、安心です。

キシリトール中毒

キシリトールの過剰摂取で、低血糖血液の凝固障害、そして播種性血管内凝固(DIC)などの重篤な症状を示すこともあります。キシリトールは必ず犬から遠ざけておいてくださいね。