【犬のしこり】これは何?獣医師が解説します。

犬の体の表面に、しこりを見つけて、心配になっていろいろなサイトを見てさらに心配になる方は多いと思います。

しこりは、病理検査をするまでは、何なのかは判明しません。見た目で似ていても、明確に診断したことにはなりません。

予想で終わらず、確定的な診断まで進みましょう。

病理検査をするまでは、予想しかできませんから、予想の段階で、必要以上に心配しても、結局予想以上のことにはなりませんから、明確な診断名を知りた場合には、できるだけ早くに動物病院に行って、確定診断に向けての検査や手術を進めることをお勧めします。

中には、確定診断を知りたいけど、手術はイヤというご家族もあります。しかし、ほとんどん場合、確定診断のためにには、手術が必要です。

例えば、肥満細胞腫という腫瘍があります。一般的には悪性腫瘍です。これは、多くの場合には、注射針でしこりを突いて、肥満細胞腫というところまでは診断ができます。普通は麻酔は必要ありませんし、かかる時間も5分程度でしょう。しかし、これだけでは、悪性度を知ることは困難です。やはり、ある程度の組織片を顕微鏡で見なければ、グレード分類と呼ばれる評価はできず、悪性度を知ることは難しくなります。

しこりというだけでは、これが何かを断定することはできません。では、明確に、そのしこりが何かを断定するために必要なことは、病理組織学的検査以外にはありません。つまりは、病理検査と呼ばれるもので、理想的にはお米粒程度でも良いので、組織を取って顕微鏡で検査をします。

その検査の多くは、獣医病理診断医と呼ばれる獣医師が担当します。街の動物病院の獣医師が、それぞれの患者さんの組織を採取して、ときには手術で切除するなどして、それを病理検査のセンターに送ります。それをいろいろな加工の後で、病理医が診断し、動物病院に診断書として回答するのが一般的です。

ですから、形だけ似ているからと言って、悪性腫瘍だとか、良性腫瘍だとか、ある程度は予想できても、正確に判断するためには病理組織学的検査が必要なのです。

例えば、数人のグループが山で遭難したとします。そして、運よく生還したとします。そのときに、毛布でくるまれていて、顔を見ることができません。それを見て、あの人かも知れない、この人かも知れないと、予想している段階があります。その段階では、予想以上のことはわかりません。どんなに頑張ってもです。それをさらに予想する意味はないのではないでしょうか。

次には、すりガラス越しに、シルエットが見えます。それでもはっきりとしたことは言えません。大きさや輪郭しかわかっていないのですから、そこでも、ある程度の予想しかできないわけです。

さらに、実際に姿を見せた人がいたとして、その人が、自分は○○という者ですと名乗ったとして、それだけですっかりと信用することができるでしょうか。真実かも知れませんし、虚偽の返事をしているかも知れません。

しこりについても同じようなことが言えます。

予想を知りたいのではなく、実際に何なのかを知りたいはずです。そして、獣医師は、見た目でできるのは、予想だけです。限りなく正解に近い予想のこともあるでしょうし、正解から遠い予想かも知れません。

犬のしこりを見つけ、心配になってインターネットで調べたら、怖いことばかりを目にしてしまって、さらに心配になる方を多く見てきました。予想の段階では、どんなに情報をかき集めても、予想以上のことは得られません。それよりも、早く確実に確定診断を求めることが大切ですし、それまでは、何もわからないということを受け入れることも大切です。