【犬の高脂血症】コレステロールと中性脂肪が高い!!獣医師が解説します。

なかなか下がらない、高脂血症がありますが、まず行うべきは、高脂血症の原因を突き止めることです。その次には、食事療法、原因疾患の治療、サプリメントを使います。薬物療法は、先に書いた方法で解決せず、高脂血症をどうしても治療しなければならないときに限ります。薬物療法には問題点が多いからです。

犬の高脂血症とは、血液中のコレステロールと中性脂肪のどちらか、あるいは両方の値が高くなった状態を言います。血液検査では、コレステロールは、Choとか、TChoなどと表されます。そして、中性脂肪は、トリグリセリド、TGと表されます。

血液検査では、Cho、あるいはTChoとTGの値を見ることになります。

高脂血症には、原発性と続発性があります。原発性とは、まさに高脂血症という病気ですが、続発性とは、何かの病気の結果で高脂血症になったというものです。

原発性高脂血症には、ミニチュア・シュナウザーに見られる、原発性高トリグリセリド血症やシェットランド・シープドッグなどに見られる、原発性高コレステロール血症があります。脂質の多い食事を取ると、血漿が白く濁ります。

続発性高脂血症を起こす病気には、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病、ネフローゼ症候群、腎アミロイドーシス、肝疾患です。

グルココルチコイド、いわゆるステロイドを使った治療中でも、高脂血症が見られることがあります。

原発性と続発性のどちらが多いかと言いますと、当然ながら、犬の種類の限定のない続発性高脂血症の方が多く見られます。甲状腺機能低下症は、犬ではよく見られる病気で、この病気があると必ず高脂血症になるわけではありませんが、健康診断で高脂血症が見られた場合には、反対に甲状腺機能低下症を疑い、甲状腺機能検査を行うことになります。同様に、副腎皮質機能更新症(クッシング症候群)でも高脂血症が見られます。

どのように診断するの?

空腹時に採決をして、トリグリセリド(TG)やコレルテロール(Cho、あるいはTCho)を調べます。空腹時とは、前の食事から12時間以上が経っている場合を言います。

治療はどうするの?

原因療法食事療法サプリメント、それでも難しければ、薬物療法です。原因療法とは、続発性高脂血症の犬の場合には、その原因となっている病気の治療を優先するということです。

原発性か続発性の分類を行って治療を始めますが、この分類は、ときに困難な場合もあります。例えば、副腎皮質機能亢進症のミニチュア・シュナウザーの場合には、原発性も続発性もあるかも知れません。

コレステロールが高い場合、すぐにコレステロールを下げる薬を使うことはしません。薬物療法は、その他の治療に反応しない場合に、副作用に注意を払いながら行います。

高脂血症の治療の基本は、食事療法です。ほとんどの高脂血症の犬は、脂質の多い食事を取ってはいません。手作りであったり、市販のドッグフードであったりという違いはあると思いますが、いずれも特別に脂質が高く、そもそも高脂血症を起こしやすい食べ物を食べていたから、結果として高脂血症になったということはないのです。しかし、まずは、脂質が少なく、繊維を多く含んだ食事を与えるべきです。

ちょっと基本事項になりますが、犬の血液中の脂質には、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、低密度リポタンパク質(LDH)、高密度リポタンパク質(HDL)があり、高脂血症とは、リポタンパク質が多く作られている状態か、その分解が遅れているかのどちらかです。

犬の場合には、高密度リポタンパク質が中心です。ヒトは、低密度リポタンパク質が中心です。

カイロミクロンは食事で取り込んだ脂肪から作られますので、食事制限が必要になるのです。そして、繊維を多く含む食事は、結果として、コレステロールを使って胆汁酸を合成します。つまり、血中コレステロール値を下げる役割をはたします。

私がみる犬の場合、食事療法はしっかりとされているにも関わらず、なかなか高脂血症が改善しない犬がいます。結構多いと思います。次には、サプリメントを使います。

薬物療法は、食事療法、サプリメント、そして続発性の場合には、原因疾患を治療して、それでも高脂血症の改善がなければ、薬物療法を行います。

なぜ、それほど薬物療法を温存するかと言いますと、いくつの理由がありますが、犬の場合、コレステロールが高いことが健康に及ぼす害が少ないということと、食事療法や続発性高脂血症の治療に反応が見られることと、薬物療法に使う薬物には、その全てに毒性があるために、特別な治療にあたります。

高脂血症の治療に使う薬物の具体的な内容は、コンテンツ規定にしたがって、割愛しますが、それらで起こり得る副作用は次のとおりです。

腹部痛、嘔吐、下痢、肝機能異常、眠気、筋肉痛、肝毒性、痒み、胃腸の不快感、便秘