【猫が下痢をする原因】急性も慢性も、獣医師が解説します。

まずは、一覧で書きますね。猫が下痢をする原因は、こんなにも多く、これでほぼ網羅できています。

解剖学的な異常、感染症、免疫の異常、炎症、代謝性・ホルモン性、腫瘍、薬・毒物、ストレス・その他

それぞれを見てみます。

解剖学的な異常

解剖学的な異常とは、腸が短い、手術で腸を大きく取り除いた、門脈シャント、腸閉塞、横隔膜ヘルニア、心嚢膜ヘルニア、など腸そのものや、消化に関わる臓器が正常な働きができなくなるような奇形が含まれます。

この中では、先天的に腸が短いという異常については、私自身は遭遇したことがなく、また、明らかに短ければ診断できそうですが、診断も難しい印象です。それ以外につきましては、ある程度診断は容易です。長引く猫の下痢で、検査をした場合に、見逃されることは少ないでしょう。

感染症

感染症にもいくつか種類があります。まずは、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫です。それぞれ、ウイルス性腸炎などと、腸炎という診断名がつきます。

ウイルス性

ウイルス性腸炎には、腸コロナウイルス感染症、猫汎白血球減少症ウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症、ロタウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、猫エイズウイルス感染症、ロタウイルス感染症があります。これらの中で、下痢を起こしやすいのは、猫汎白血球減少症や猫伝染性腹膜炎ウイルスです。まず、猫汎白血球減少症は、検査のための簡易キットがあり、ある程度の便があれば検査ができます。また、他のウイルスも、比較的容易に診断がつくでしょう。

細菌性

細菌性腸炎には、クロストリジウム・パーフリンゲンス、大腸菌、コリネバクテリウム、サルモネラなどあります。

これらの中で、注意が必要なのは、クロストジウム・パーフリンゲンスでしょう。普段は特別に問題を起こすことがない常在菌ですが、ときには、重篤な腸炎を引き越すことがあります。早期に診断があれば、治療そのものが難しいということはありません。

真菌性

真菌性腸炎は、ヒストプラズマ、アスペルギルスといういわゆるカビによる下痢です。これらも診断が難しいものです。便の中には、細菌が大量にみられます。その中から、異常を示す細菌はある程度把握されていますが、そこに真菌がいるかどうかはすぐにはわからないでしょう。私は、真菌による猫の下痢症を診断したことがありません。真菌、いわゆるカビや酵母菌が猫の下痢の原因になることは多いことではありません。

寄生虫性

寄生虫性腸炎には、イソスプポラ、ジアルジア、トキソプラズマ、クリプトスポリジウム、猫回虫、猫鉤虫、猫糞線虫、猫条虫などがあります。寄生虫性の下痢は、診断が難しいこともあります。1回の検便だけでは、寄生虫が原因かどうかの判定が難しいことがありますので、特に長引く下痢の場合には、寄生虫の存在が確かではなくても、まずは駆虫薬を使ってみて、寄生虫対策を行うこともあります。ジアルジアにつきましては、薬を使うことで治療ができますが、ジアルジアを根絶することは容易ではないために、猫の下痢が治るところまで治療をすることが多いですね。ジアルジアによる下痢を繰り返すこともありますが、高頻度では起こりませんので、もし短期間に下痢を繰り返す場合には、他の原因も考えなければなりません。

免疫の異常

免疫の異常というのは、食べ物によるアレルギーのことです。食物不耐性とか、過敏症とも言われます。猫の体が受け付けない物があるということです。では、どのような食べ物に対して下痢を起こすのでしょうか。それを知るためには、いくつかの方法があります。

一つ目は、薬を与えてみることです。プレドニゾロンと呼ばれるステロイドを与えてみます。これに反応して下痢が治れば食物不耐性の可能性があります。しかし残念なことに、猫の慢性的な下痢の治療で、ステロイドが効果的に働くのは、食物不耐性だけではありません。例えば、IBDと呼ばれる炎症性腸疾患もプレドニゾロンに反応します。

二つ目は、血液検査ですが、これは万能ではありません。血液検査は、ある程度補助的にはなりますが、それだけで猫の食物不耐性の原因になっている食物を知ることはできません。

三つ目は、食物除去試験と負荷試験です。食物不耐性の猫に使う療法食を与えてみます。これに反応して、下痢が治れば、何かしらの食べ物が影響していた可能があります。そうなると、これまで食べていた食物に含まれる何かが下痢の原因になっていたと考えられますから、次には、食品を与えながら、下痢になるものとならないものを選り分けて行きます。これは、獣医師の指導のもので行なってくださいね。

そして、炎症性の下痢です。猫の下痢の原因で、炎症性に起こるものには、次のような病気があります。炎症性腸疾患、化膿性腸炎、潰瘍性腸炎、組織球性腸炎、肉芽腫性腸炎、好酸球性腸炎、そしてリンパ球性腸炎です。これらの炎症の診断には、組織検査が欠かせません。全身麻酔で内視鏡で組織を取るか、あるいは開腹手術で腸の一部を切除して組織を取るかして、何れにしても病理組織学的検査を行います。

代謝性・ホルモン性

代謝性・ホルモン性の下痢には、甲状腺機能亢進症、糖尿病、膵炎、肝疾患、そして膵外分泌不全があります。これらの病気は、血液検査で診断をすることができます。全てを一度に調べることもできますが、相当な検査費用がかかりそうですので、通常は獣医師が鑑別診断リストを作って、必要な検査だけを行うのが現実的です。そして、これらの治療には、飲み薬を使う方法、療法食を使う方法、そして糖尿病の場合には、ご家庭でインスリンの注射が必要なことがあります。

腫瘍によるもの

猫の下痢を引き起こす腫瘍があります。最も多いのがリンパ腫です。他には、肥満細胞腫をはじめとする消化管腫瘍です。これらも病理組織学的検査が必要ですので、内視鏡か開腹手術によって、組織検査ができるくらいの組織を採取する必要があります。そして、手術で取り除くことができない腫瘍の場合には、抗がん治療を行うことになるかも知れません。

薬や毒物

そして、薬や毒物が猫の下痢の原因になることがあります。これらは、猫が口にしたことがある程度予測できることがありますので、まずはそれ以上与えないようにして、必要な対症療法を行えば、治ることが多いものです。

その他

その他には、ストレス食べ物ではないものを食べてしまった食べ物だけれども大量に食べてしまった食事内容が急に変わった、などということが下痢の原因になることがあります。これらも、ある程度は、ご家族の方にお心当たりがあることが多いので、問診でお話を伺いながら、診断ができます。