【犬の涙やけ】これを食べれば大丈夫。それは本当ですか? 犬の流涙症を獣医師が解説します。

結論から書きます。

犬の涙やけに食べ物は関係ありません。

犬の涙やけは、先天的な理由で起こることが多く、それらを治するには外科的な治療が必要なことがほとんどです。つまりは、薬では治らないことが多いということです。

犬の涙やけが何かしらの食べ物で起こることはありません。そして、特定の食べ物で治るということもありません。犬の涙やけが、食べ物で起こると思っている方があります。そして、ある食べ物を与えると、治ると思っている方もあります。残念ながら、そのような事実はありません。

いきなり余談ですが、因果関係を非常に短絡的に捉える方があります。何か決まったドッグフードを与えているときに、涙やけが改善したとします。涙やけが食べ物で起こると思っている方は、「やっと、探し求めていた食べ物を発見した!!」と思われるようです。では、その食べ物を食べれば、どの犬も涙やけにはならないのでしょうか。

もしそうだとすれば、すべての涙やけは、その食べ物で解決します。

原因と結果の検証は、正しく行うべきですが、もともと食べ物で起こると思い込んでいると、良くなっても、悪くなっても、食べ物だという発想から離れることが難しいようです。

本題に戻ります。

犬の涙やけの原因は、先天性と後天性のものがあります。

すなわち、生まれながらに起こるものと、生まれた後に起こる原因によるものです。

生まれながらに起こるもの。- 涙やけの先天的な原因 –

涙液排出経路の異常、これには、涙点閉塞、小涙点、涙管閉塞、涙管過小、涙囊・鼻涙管奇形、外鼻孔閉塞があります。涙は上下のまぶたにある涙点と呼ばれる出口から涙管というところを通って、鼻に抜けます。その出口、管、出口が閉じていたり、小さかったり、狭かったりということで、涙が正常に目から鼻に排出されない、あるいは、排出され難いということです。

そして、内眼角の涙液排出に関係している内眼角の靭帯、眼瞼内反、睫毛の異常も流涙症の原因になります。眼瞼内反とは、特に下まぶたが、わずかにでも目の内側に巻いているようなものです。睫毛は、犬の場合には、上瞼にしかありませんが、涙丘と呼ばれるところに生えている毛が目に入ると流涙症、すなわち涙やけの原因になることがあります。

生まれた後に起こる原因。 – 涙やけの後天的な原因 –

涙の排出路の閉塞で、その原因になるのは、外傷、炎症、腫瘍などです。

また、眼脂腺(マイボーム腺)の分泌障害、つまりは、目に油の膜を作るマイボーム腺という組織が働かず、涙の中の油成分が少なくなる場合です。そして、アレルギー性の結膜炎や眼瞼炎が原因になることもあります。その他にも、角膜の病気や白目が充血をするぶどう膜炎、時に緑内障が原因になることもあります。

このように、涙が目から鼻に抜ける経路に問題が起こって涙が目から溢れることで、涙やけが起こるようになります。

上の原因の中で、先天的な原因になる涙やけは、薬や涙管洗浄などの処置で治療することは難しく、完治は望めません。しかし、いい状態を作ることができる場合があります。治らないけど、良くはなるということです。つまりは、何かを続けないと、また元に戻るということです。

ではどうするか?

手術を行います。眼瞼の内反や、外反、の場合には眼瞼形成手術、そして、眼角形成術、毛が原因の場合には、いわゆる永久脱毛として毛根破壊術、そして、涙点開口や涙管拡張、時に、涙を作る涙腺の一部である瞬膜腺をまた一部切除する手術も行われることがあります。

しかしながら、私が診察をする犬の中で、涙やけや流涙症が犬の健康を害することはほとんどありません。

ですから、涙やけを内科治療である程度管理することをお勧めし、もっとはっきりとした効果を希望される場合には、手術をすることにしていますが、この手術はヒトでいうところの美容整形に近いものだと考えてます。

つまりは、涙やけの見た目を気にする場合に限って行うことになります。

付け加えておきますと、涙管洗浄もある一定の効果がありますが、先天的な原因がある場合は、その原因自体は治らないないわけですから、涙管洗浄でキレイになったとしても、それをずっとずっと続けなければならなくなります。

また、睫毛や涙丘の毛についても、抜き続けなければならないでしょう。

私が治療している犬は、涙管洗浄を半年以上続けています。ほぼ涙やけは治っていますが、涙管洗浄をやめるとまたしばらくして涙やけが始まりますので、せっかくキレイになったのに、ここでやめたらもったいないという状態が続いています。

最後になりますが、涙やけ治療や予防として、何か良い食べ物を探すことは、無駄に終わることになります。お友達の犬は、食べ物で治ったと本当に信じている方は、ご自身の犬でも試してみてください。うまく治ればラッキーかも知れません。