【犬の膵外分泌不全】食べても食べても痩せていく病気。獣医師が解説します。

膵外分泌(すいがいぶんぴ)?

膵臓からは、消化酵素ホルモンが出ます。消化酵素を出す働きを外分泌機能と言い、ホルモンを出す働きを内分泌機能と言います。消化酵素は、膵臓と腸とをつなぐ膵管を通って、十二指腸へ送られます。この消化酵素を出す働きが低下するのが、膵外分泌不全という病気で、消化不良が起こります。

犬の膵外分泌不全はなぜ起こる?

犬の膵外分泌不全(Exocrine pancreatic insufficiency : EPI)は、慢性膵炎の結果、消化酵素を出す細胞が失われて、必要な量の消化酵素を出す膵臓の細胞が残っていないために起こるとされています。つまり、慢性的な膵炎によって、膵臓の細胞が失われることで、十分な消化ができなくなる病気ですね。

まずは結論から

犬の膵外分泌不全(EPI)は、治りません。なぜなら、消化に必要な膵臓の機能が失われているために、十分な消化ができないわけです。この働きは取り戻すことができません。したがって、生涯にわたる消化酵素の投与が必要です。これは、消化酵素を食事に混ぜるなどして、口から取るというものです。しかし、それで一旦良い状態ができると、長期に渡って犬は安定します。

どうやって診断するの?うちの子は本当に膵外分泌不全なの?

血液検査で、血中トリプシン様免疫活性(TLI)を調べます。これが下がっていれば、そして、特徴的な症状が伴っていれば、膵外分泌不全の可能性が非常に高くなります。特徴的な症状とは、たくさんたくさん食べるのに、痩せてくるというものです。時に下痢をすることもありますし、しないこともあります。そして、膵炎になったことがあるというのも診断の助けになります。

そして、一般的な血液検査では、目立った異常が出ないこともあります。この膵外分泌不全を呈してからの経過が長い場合には、栄養不足を示す数値が血液上で変化しています。アルブミンというタンパクの数値が低くなったり、中性脂肪やコレステロールの数値が下がることがあります。

また、血中トリプシン様免疫活性(TLI)と同時に測定するのが、血中コバラミンと葉酸の濃度です。これらは、膵パネルとして測ることが多く、血中トリプシン様免疫活性(TLI)、血中コバラミン濃度、血中葉酸濃度、そして、cPLIの4項目がそのセット内容です。ちなみに結構高価な検査です。

治療

膵外分泌不全を発症した膵臓は、治療することはができないために、不足している膵酵素を補うことで、症状の改善を図ります。

消化酵素には、いくつかの種類があるので、まずは第一に選択できるものから初めて効果を見ながら量の調整をしたり種類の変更をしたりします。多食のはずが、消化酵素を受け入れない犬の場合には、なかなか治療が進まずに、予後を悪くすることがあります。しかしながら、一旦消化酵素で良い状態を達成できると、そのまま良い状態を維持することも可能で、良い予後が期待できます。

しかしながら、この治療は犬の生涯にわたって行うものですので、飼い主さんの理解がとても重要なものになります。

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