【犬の食物アレルギー】検査で陽性の食物を与えなければいいはず。獣医師が解説します。

犬が痒がりますか?

食物アレルギーは、血液検査だけで断定することは困難だということは、前回の記事で書いたとおりです。

食物アレルギーの血液検査をする場面のパターンは下のとおりです。

  • 皮膚疾患のある犬を診察した獣医師からの提案
  • 消化器疾患のある犬を診察した獣医師からの提案
  • 痒みや皮膚に気になるところがある飼い主からの依頼
  • その他

皮膚疾患があって、獣医師がアレルギー検査(抗原特異的IgE抗体検査)をすると考えた場合、犬は痒みがあるはずです。ときに、外耳炎だけのアトピー性皮膚炎があったり、肛門だけが痒いアトピー性皮膚炎がありますが、痒いということは共通しています。

この記事でもっとも書きたいこと

犬が痒がっているのが食物アレルギーであれば、それは幸運かも知れません。原因となっているもの(アレルゲン)を食べなければいいだけですから。

もし、原因となっているものを食べ物を食べていなのに、痒いとしたら、血液検査結果がおかしいか、あなたの犬が食物アレルギーではないかのどちらかでしょう。

そういう時に、懸命に食べ物探しをしますか?

さらに書きたいこと

もともと犬がそれほど痒くはなかったけど、アレルギー検査(抗原特異的IgE抗体検査)をしたら、結構色々な食べ物に陽性が出て、それから原因となっている食べ物を与えずに過ごしている。すると、犬は痒がらないし、皮膚も調子が良い。

この場合もありますね。もしかしたら、何を食べても大丈夫かも知れませんよ。そもそも食物アレルギーではなかったのかも知れませんよ。だから、検査結果で大丈夫というものだけを与えてきたけど、そうではなくても問題はなかったという考えも必要です。

私の体験

他の動物病院に通院していた犬が診察に来ました。皮膚の病気ではなく、全くの別件での診察だったのですが、食べ物のお話になった時に、飼主さんが言われました。実は、うちの犬は牛肉のアレルギーなんです。皮膚を見ても、とても綺麗で、どこにも皮膚症状はありません。牛肉以外をい与えているからという可能性はもちろんあります。しかし、・・・

犬の食物アレルギーの発症は1歳未満と考えられています。

もし食物アレルギーという診断が3歳を過ぎてなされたり、1歳未満のときには、全くと言って良いほど皮膚の痒みがなかったとしたら、食物アレルギーの可能性は低いでしょう。

私は、上の犬にもし与えて見たいのであれば、牛肉を与えて見てもいいと思いますよとお伝えしました。

飼い主さんは、食欲が低下した犬に牛肉を与えてみました。犬は喜んで食べて、アレルギー症状も、皮膚の痒みも見られませんでした。長年、牛肉の入っていない食べ物を与えてきたのに、もしかしたら食べてもよかったのかしら。そのようなお話をしました。

結果論ですから、そこについてはコメントが難しいですよね。飼い主さんも一生懸命だった訳ですからね。

もしあなたが、犬に与えている今の食事に満足しているのであれば、続けると良いと思います。

しかし、他のものを与えたいな、とか、手作りで色々な食べ物を作ってあげたいけど、食物アレルギーが心配という場合、まずは与えてみても良いと思いますよ。

負荷試験をしてみましょうか

本当に、該当する食べ物がアレルギーの原因であれば、犬のかゆみが落ち着いているときに、食物負荷試験をしてみるのも方法です。

1週間ほど、与えたい食べ物を与えてみます。食べ物のベースは今までも食べている物で良いでしょう。そこに、例えば、牛肉アレルギーだという犬に牛肉を1週間でだんだんと量を増やしながら100gまでの量を与えてみます。

ここで、犬がとっても痒がったら、牛肉はもしかしたらNGかも知れません。

ここで考えなければならないことがあります。

  • 食べたら痒がると思っている牛肉を与えたために、飼い主が過敏になっていて、いつものかゆみが与えた牛肉のせいだと勘違いをする場合
  • 飼い主が過敏になっていて、あまり痒がってもいないのに、牛肉と与えたから痒がっているように思ってしまう場合

できれば、牛肉を与えた場合のかゆみの評価は、だれか第三者が行うことが理想的です。先入観が評価の邪魔になるからです。

そして、もし1週間牛肉を与えても、特別に痒みが出なかったり、いつもと同じ程度であれば、牛肉はおそらく問題なしです。これからも食べても大丈夫です。

できれば、これを血液検査(抗原特異的IgE抗体検査)や、ときにリンパ球刺激試験などで陽性と出た食べ物でも食物負荷試験を行うことは、現実的です。

検査結果と、臨床症状(犬の実際の症状)が一致しないこともあります。

上記のことは、現在の食べ物以外を与えてみたい。もっと色々なものが食べられたらいいのにと思っている方に書いています。

現状の犬の食生活に満足している場合には、それ以上のことは必要ないかも知れません。