【犬のクロストリジウム性腸炎】急性の下痢を起こす常在細菌。獣医師が解説します。

犬が急に下痢をした。

結論から言いますと、この病気はちゃんと治ることが多いのですが、よく繰り返します。クロストリジウムという細菌は、ときに怖い病気(出血性胃腸炎)も起こしますが、このクロストリジウム性腸炎という診断が立てばあまり心配はいりません。それでも治療は必要ですよ。

犬に下痢を起こす細菌性腸炎の中では、このクロストリジウム性腸炎はまずお話しなければならない病気です。

原因になる細菌はどこから感染するの?→もともと犬の腸のなかにいる細菌です。屋外や犬友達から感染するようなものではありません。

どんな細菌なのですか?→クロストリジウムは、Clostridium perfringensと書き、クロストリジウム パーフリンゲンスと呼ばれます。これは学名です。健康な犬の腸のなかにいる細菌で、芽胞形成菌と言いまして、芽胞というものを作ります。芽胞については、また別の記事で紹介しますね。ちなみに、納豆菌も芽胞形成菌です。芽胞を作る細菌はクロストリジウムだけではありません。

ふだん犬のお腹の中にいることは大丈夫なの?→この細菌は芽胞というものを作ります。芽胞についての詳細は別記事にしますが、芽胞とは細菌が自身を守るために作るバリアみたいなものです。このバリアがあれば、熱湯のような高熱にも耐えることがあります。クロストリジウムが芽胞を作るときに何種類かの毒素を出します。この毒素の中に、犬に腸炎を起こすものがあります。ですので、いつも毒素を出すわけではないし、全ての毒素が腸炎を起こすわけではありません。腸炎を起こすクロストリジウムは健康な犬の腸に常在しているのに、問題を起こすことは少ないのです。

治療はどうするの?→クロストリジウムに効果的な数種類の抗菌薬から選択した薬を1-2週間飲ませます。再発を繰り返す場合には、高繊維食を与えます。基礎疾患に炎症性腸疾患(IBD)があることもありますので、その場合にはそのことも考えながら治療を行います。

この病気の確定診断は難しい

確定診断とは、必要な要件を揃えて、この病気だと確定する訳です。が、このクロストリジウム性腸炎ではそれが困難です。確定させることが難しく、それでも犬はちゃんと治すことができますし、重篤な症状をみせることも少ないので、結果、この病気だと仮定して、治療をすることになります。そして、治れば良いという考えです。

なぜ確定診断が難しいのか?

もともとクロストリジウム(Clostridium perfringens)は、健康な犬の腸内にいる常在菌ですから、下痢をしている犬の糞便中にクロストリジウム(Clostridium perfringens)がいるからといって、この病気だとも言えない訳です。もともといる訳ですから。

では、このクロストリジウム(Clostridium perfringens)の特徴である芽胞形成菌の数を糞便中から調べて見たらどうでしょうか?その菌の数と、下痢の有無、そして、毒素の有無には関係がないことがわかっています。つまりは、糞便中に芽胞がたくさんあるからと言って、毒素が多いとか、病原性が高い(病気が重い)とかは言えない訳です。

ではどうするか?

クロストリジウム(Clostridium perfringens)が作り出して、クロストリジウム性腸炎を起こすとされる毒素を検出したり、この毒素を作る遺伝子を検出することになります。

しかし、動物病院でそこまでは行わないことが多いですね。

検査結果を待っている間に治るでしょうし、検査料金がかなりかかります。

普通に治療をすれば、数日、あるいは最長長くて2週間くらいで治療が終わり、治療費の合計は数千円くらいだとして、確定診断を行うための検査料金はそのレベルでは難しいでしょう。

もしかすると、この辺りは、ヒトが風邪を引いて病院に行ったときに似ているかも知れません。ヒトが風邪を引いても、病院では確定診断はしませんよね。何のウイルスが原因か、何の細菌が絡んでいるかも検査しません。少なくとも私は、そのような検査を受けた体験はありません。検査をされたとするとインフルエンザの時くらいです。それでも、治ればいい訳ですから、確定診断もしないのに薬を出すのはおかしいとも思いません。でも、ここで確定診断をするために検査をしたらどうなるのでしょうか。医療費が相当かかるでしょうね。そして、結果が出る頃には治っているでしょう。

予防はできるの?→高繊維食はクロストリジウム(Clostridium perfringens)性腸炎の予防に効果があるとされています。治療というよりも、高頻度で繰り返す場合には、普段の食事として検討しても良いと思います。そして、このような食事は動物病院で取り扱いがありますので、かかりつけの獣医師と相談してみてくださいね。