【糖尿病性ケトアシドーシス】救急!! 犬と猫の病気を獣医師が解説します。

糖尿病の犬と猫の数が増えています。現在私が治療をしている犬と猫は、決して少ない数ではありません。その中で、最も気をつけなければならないのは、糖尿病性ケトアシドーシスにならないようにすることです。なったら非常に厳しいことになります。その中には、急死することも含まれます。

糖尿病性ケトアシドーシスは、救急管理が必要な病気です。糖尿病性ケトアシドーシスの犬と猫の死亡率が、犬で29%、そして猫では26%だったというレポートもあります。それほど怖いものです。

犬と猫の糖尿病性ケトアシドーシスとは、どのような病気でしょうか?

糖尿病の犬や猫に起こる、体が酸性化してかつ脱水が起こるというものです。

犬の糖尿病治療には、インスリンの注射が欠かせません。食事管理も同様に不可欠です。

結構細かい説明をしますね。

まず、糖尿病のどうぶつの体では、糖をエネルギーとして使うことができません。これは、糖を体のエネルギーとして使うためには、インスリンが必要ですが、糖尿病になるとインスリンが必要量に対して足りなくなるからです。

そして、インスリンを打ち消すようなホルモンがいくつかあるのですが、インスリンがあれば、打ち消してチャラになるのに、インスリンがないために、このインスリンを打ち消すホルモンが過剰になってしまいます。打ち消す相手(インスリン)がいないので、増えてしまうわけです。

この本来インスリンを打ち消すホルモンが増えてしまうことで、余計に糖がエネルギーとして使われなくなり、代わりに脂肪をエネルギーとして使うようになります。すると、使われない糖が増えていく中で、脂肪の分解も行われますから、分解された脂肪である脂肪酸が体の中で増えて行きます。

使われないから糖が増える。そして糖をエネルギーにできないから、エネルギーにしようと脂肪が分解され、脂肪酸が増える、と、このようなことが起こります。

体の中で、脂肪酸が増えると、この脂肪酸はインスリンが欠乏している状態での肝臓で急速に酸化されます。そして脂肪酸が酸化されてできるのがケトン体です。

この状態の体に必要なのは、インスリンです。
ちょっと細かすぎたかも知れませんが、これが糖尿病性ケトアシドーシスという病気の起こり方です。

糖尿病性ケトアシドーシスと診断するために必要なものは、まず糖尿病であるとうこと、そして、尿中あるいは血中にケトンが増えていることです。

普通は、尿検査をすることで、尿中の糖もケトンも調べることができます。ときに、乏尿と言って、尿が作られないときには、血液中のケトンを見ることもあります。

治療の基本は、静脈からの点滴とインスリンの注射です。
それでも血糖値は、できればゆっくりと正常値まで持っていくようにします。だいたい丸々1日から2日くらいかけて。急速に血糖を下げすぎることは、かえってよくないことも多いからです。そうなると、糖尿病性ケトアシドーシスと診断されると、まず急死があるかも知れないという説明を受けることになり、そのまま入院しなければならないはずです。

きっと多くの犬や猫が糖尿病性ケトアシドーシスと診断されるのは、糖尿病治療中というよりは、糖尿病だとわかったときにはすでに、ということが多いと思います。
あなたの犬や猫が初めて糖尿病だとわかり、それだけでも頭がいっぱいになるのに、聞いたことがない糖尿病性ケトアシドーシスだと言われ、さらには急に死んでしまうかも知れないとも伝えられることになるわけですから、動揺されない方は少ないでしょう。

糖尿病であっても、通常の場合には、血液検査を行う血清は無色透明です。まるで水のように。でも、糖尿病性ケトアシドーシスになっていると、ときに真っ白な血清だったり、さらには、黄疸も混ざって黄白色のこともあります。このような血清を見ると、ことの深刻さが色でわかって背筋が寒くなることがあります。

糖尿病性ケトアシドーシスから脱して、いわゆる普通の糖尿病にまで回復したら、その後はインスリンによる治療を生涯に渡って行わなければならないことがほとんどです。
獣医師はあなたのサポートをしっかりとしてくれると思います。
通院頻度も高くなるでしょうけれども、かかりつけの先生と色々と相談をして、まずは安心で来るところまでくれば、後は難しいことは少ないはずです。

しかし、もしもその後の治療を続けることができないならば、例えば、インスリンの注射は自宅ではできないとか、したくないとかあれば、糖尿病性ケトアシドーシスの場合は退院したら完治していて、その後に手がかからない他の病気とは違いますから、治療の最初にある程度の意思を獣医師に伝えておく必要もあるでしょう。