【犬の歯周病】犬の口臭は、病気の兆候です。獣医師が解説します。

犬の口はそもそも無臭です。

えっ?と思いましたか?

うちの犬は口臭がするけど、決して病気なんかじゃありませんよ。

まあ、そう思いますよね。

しかし、犬の口はそもそも無臭だというのは本当です。
では、何の病気か。それは、歯周病がほとんどです。

犬も猫もそうなのですが、歯周病はどのような病気よりも発生率が高いのですが、ご存じの方は少ないかも知れませんね。特に3歳以上の犬と猫のほとんどが歯周病を発症しているという報告があります。

ではどうしたら良いのか?

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まず歯磨きトレーニングを学ぶ
犬を歯磨きに慣らす
徐々に歯磨きを習慣化する
動物病院で全身麻酔での口腔処置をする
歯磨きを続ける
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上のことは、必須ではありません。どちらかと言いますと、最も理想的なものです。

きっとあなたも何となく気づいていることだと思います。

でも、そんなことわかっているけど、歯磨きはできないんですよね。うちの犬は歯磨きが大嫌いで無理です。

きっと多くの方がそう思っているでしょうね。
なぜなら歯磨きをはじめから嫌がらない犬はいませんから。
特殊な犬を除いて、全ての犬が歯磨きをはじめは嫌がります。


犬の歯磨きについてのHOW TO は、記事の後の方でご紹介します。

その前に、犬の歯周病についてかなり詳しく書いてみます。

記事の内容です。

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犬の歯周病は、どんな病気なのか。
犬の歯周病は、どのように始まって、どのように進むのか。
犬の歯周病を獣医師は、どのように診断するのか。
犬の歯周病の治療方法。
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犬の歯列

犬の歯周病は、どのような病気なのでしょうか。

犬の口の中には歯周病菌がいて、それに対して起こる口の中の炎症です。
歯周病は歯肉だけに起こるのではなく、歯のセメント質と呼ばれる部分や、歯の根っこと顎の骨をつなぐ歯槽骨という歯周組織というところまで進行します。歯肉だけに起こる炎症は改善可能ですが、他の組織まで炎症が進むと完全な回復はかなり難しくなります。

犬の歯周病は、どのように始まって、どのように進むのでしょうか。

犬の歯の表面に、口の中にある歯周病菌が付くことから歯周病が始まります。

歯を磨いても、唾液に含まれる糖タンパク質と呼ばれる成分が歯の表面に薄い膜を作ります。磨いてから、この薄い膜ができるまでの時間はおよそ20分です。

この膜が歯の表面を覆うと、そこに歯周病菌が付き増え始めます。糖タンパク質の膜に付いた歯周病菌は、再度歯磨きをしないと落とすことができません。水を飲んだり、食べ物を食べると、やや数が減ることはあっても落ちないのです。

では、この歯に付いた歯周病菌が炎症を起こすまでの時間はどれくらいでしょうか?

6から8時間もすれば、歯肉に炎症が起こり始めます。

そして歯垢1gには、数千億個もの微生物がいるとされます。

これらの細菌が、まずは歯と歯肉の隙間に炎症を起こします。その炎症が進むと、歯と歯肉の隙間は拡大して、歯肉ポケットと呼ばれるくらいに深い溝になっていきます。

これを歯肉炎といって、これが進むと辺縁性歯周炎と呼ばれるものが起こります。

さらに進むと、根尖周囲病巣と呼ばれる、いわゆる歯の根っこにまで炎症が起こります。ここまでくると、歯を残しての治療はほぼ不可能です。

この状態が、上顎の犬歯などに起こると、歯の根っこから鼻に至る穴が空いてしまうことがあり、慢性的な鼻水やくしゃみが見られるようになります。

また、下顎方向に進むと、下顎の骨が歯周病によって溶けてしまい、歯周病性下顎骨骨折と呼ばれる顎の骨の骨折が起こることも珍しいことではありません。

そして、これは結構有名な話なのですが、歯周病菌が血管を通じて全身に運ばれると、心臓、肝臓、そして腎臓にも歯周病菌が見られることもあります。

犬の歯周病を獣医師は、どのように診断するのか。

獣医師は、歯周病の診察を行うときには次のようなことをみています。

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歯肉の炎症の程度
歯垢の付き具合
歯石の付き具合
歯のグラつきの程度
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根分岐部病変(下顎の歯肉が下がって、あるいは上顎の歯肉が上がって、歯の根っこが見えるようになります。ここを根分岐部と言います。)

ポケットの深さ

歯周病のX線所見

ここで大切なのは、歯石の除去はしていますよと言っている動物病院でも、X線検査ができないところがかなりあるということです。
歯科用のX線検査装置、すなわち、レントゲン検査ができるかどうかは、あなたが犬を連れていく動物病院の歯科診療に対する姿勢を見ることができます。

ヒトの歯医者さんにレントゲン検査装置がないところは多分ないと思いますが、動物病院にはないところもかなりあります。

動物病院でも歯科用レントゲン検査装置がないと、十分は歯科処置はできません。

もしかかりつけの動物病院で歯石の除去をすることがあれば、歯科用のレントゲン検査装置があるかを聞いてみることをお勧めします。もし、なかったり、歯科用ではないけど歯も見ることができるというような回答であれば、十分な歯科治療の用意がまだできていないかも知れません。

このX線検査は、全身麻酔をして行います。口の中に、X線検査用のフィルムかセンサーパネルを入れて、口の外からX線を照射して行う検査です。

もし歯科処置を無麻酔で行うというような動物病院があれば、そもそも必須であるこのX線検査ができません。

この検査をせずに歯科処置をするならば、ある程度簡易的な処置しかできないことを飼い主も理解しておく必要があります。


犬の歯周病の治療方法はどのようなものでしょうか。

まずは歯垢や歯石の除去を行います。

どうしても修復困難な場合には、抜歯をしなければなりません。

その内容は次のとおりです。

歯垢や歯石の除去を行います。

まずは見えているところの歯石の除去を行います。これは多くの動物病院でできることで、超音波スケーラーというものを使います。この機器は超音波振動でかなりの熱を持ちますから、注水しながら行います。つまりは、処置中の犬の口にスプレーのような形で水をかけながら行われます。もちろん、全身麻酔でないとこの処置をしてはいけません。

次には、見えていない歯肉にわずかに隠れたところ、すなわち縁下の歯垢や歯石を除去します。これも超音波スケーラーが使われることが多い処置です。超音波スケーラーには、縁上用、縁下用のチップと呼ばれるパーツがあり、これを替えて処置を行います。

おそらくここまではどこの動物病院でもできるところです。

しかし本来は、ここから先が大切です。

次に行われるのは、ルートプレーニングと呼ばれる処置です。

キュレットと呼ばれる器具を使って、セメント質をクリーニングします。凸凹したセメント質をツルツルにする処置です。

これは超音波スケーラーで行うことは難しいために、手作業で丁寧に行っています。ここを雑にしてしまうと、歯周病治療にはなりません。しかし、この処置を行っていない動物病院は結構あるかも知れません。

そしてキュレタージです。

これは歯肉の中で、炎症を起こしている歯周ポケットの歯肉を器具を使って引っ掻いて除去するという処置です。こうすることで、炎症を起こした歯肉が取り除かれ、そこには新しい新鮮な歯肉が再生します。そして、ポケットを浅くすることができます。これも、行っていなかっり、行う準備のない動物病院も多いと思います。

次いで、ポリッシングです。

これはポリッシングブラシやラバーカップを使って、歯面を磨きます。最後には、口の中の洗浄です。薄めた口腔洗浄液や、精製水、あるいは生理食塩水などで細かな汚れを洗い流します。それらが残っていると、歯肉の治癒が遅くなります。

この後には、抜歯する必要のある歯の処置を行います。

この抜歯も歯によっては非常に困難なことがあり、特殊な器具を使うこともあるために、この処置ができない動物病院もあります。その場合には、できる動物病院を紹介することになるはずです。しかし、問題なのは、難しい抜歯が必要な歯を放置する動物病院があることです。ほとんどを行うことができるけれども、最後の難しい抜歯だけができないために、そこは放置する。そのようなことがあれば、せっかく全身麻酔をして歯科処置をしても、早い段階で再度歯科処置をしなければならなくなることもありえます。

抜歯はしないに越したことはない訳ですが、抜歯をすべき歯まで残してしまうと、歯周病が悪化するだけではなく、もっと難しい病気が起こることもありますので、適切な処置が求められる場面です。